珍・音楽”業界”用語の基礎知識
思わず耳を疑うような、珍妙な言葉に出くわすことは、日常生活でもよくある話です。
音楽業界にも、一般の方が耳にすると「何??」となるような変な言葉が沢山あります。
私も初めて聞いた時は全く理解出来ず、しかし「それはどういう意味でしょうか?」と聞くこともできず、後で調べて納得となるようなこともしばしば。
知らなくてもそんなに困らないけど、知っておいて困ることはない、業界用語。
そこで今回は、そんな業界用語の基本パターンと、特に分かりにくそうな言葉を数点、ご紹介したいと思います。
もくじ
基本形
基本中の基本となるのが、言葉の並びを逆にするパターン。
「すごい」なら「ゴイスー」、「うまい」なら「マイウー」、「でかい」なら「カイデー」。
業界用語と言うか今は一般的にも広まりよく使われますが、何故か音楽業界特にジャズ界隈ではこの「テレコ」パターンが頻繁に飛び交います。
「先輩」→「パイセン」も今や完全に市民権を得ていますよね。
その他「コピー」→「ピーコツ」、「めし」→「シーメー」、「逃げる」→「ゲルニー」など、様々に応用されます。
一説では、ドラマーはこの「テレコ」がすぐに作成出来ないとダメだそうです。
ポリリズムを組み立てて叩くのに必要なスキルとの噂ですが、本当なのでしょうか?
テレコ?
正しくテレコにできましたでしょうか。そもそも、「テレコ」自体通常は聞かない言葉ですよね。
「逆にする」という意味ですが、逆再生ボタンがある「テープレコーダー」が語源と思いきや、元々は歌舞伎用語とか。
それでは、その他の変な音楽業界用語に迫ってみましょう。
ツェー万ゲー千(読み:ツェーマンゲーセン)
初っ端から分かりにくいですね。
これは「15,000」の意です。
ドレミファソラシは音名ではCDEFGABですが、ドイツ語では「ツェー」「デー」「エー」「エフ」「ゲー」「アー」「ハー」と発音するそうです。
並びで数字にあてると、1=ツェー、5=ゲーとなり、このような呼び方になっているとのこと。ギャラ(出演料、報酬)の話などでよく登場するようです。
用例
KID A「お年玉は、ツェーマンゲーセンでお願いします!」
おじさん A「・・・」
顎・足・枕(読み:アゴアシマクラ)
顎=食事代、足=交通費、枕=宿泊費の意。
これもギャラの話でよく登場し、上記と組み合わすと、「顎足込みのギャラデーマン」などとなります。
大分意味不明になってきました。
とっぱらい(読み:トッパライ)
ギャラ関連でもう一つ。これは仕事をしたその日その場で、ギャラを現金で受け取ること。
上記にさらに足してみると、「顎足込みのギャラデーマンをとっぱらいで」。
酔っぱらい?と思うくらい怪しい、もはや暗号レベルですね。
尻かっちん(読み:ケツカッチン)
これは普通に使うと思っていましたが、業界用語とのこと。
スケジュールの話などで、別件の予定が決まっており、その時間までに前の案件を終了させる必要がある場合などに使います。
例えば、16時に光回線の工事が入っており立ち会わなければならない、その前に終了時間が未定である会議が入っている場合などは、「16時尻カッチンです」、などど伝えておく。
省略して「何時ケツ?」などと聞くこともありますが、別にお尻を使って遊ぶ時間を決めているわけではありません。
また、「ケツある方はいますか?」などと使うこともありますが、私達も正常にお尻は備えています。
「ケツ」は曲においては、「最後の箇所」や「最後の構成」を指す場合もあります。
バミる(読み:バミル)
言葉の響きとして個人的に好きなのが「バミる」。
これは「テープ等を貼って所定の位置を示す」際に使います。
例えば、ツアーをするドラマーが、それぞれのスタンドやタイコの位置をマットに「バミって」おけば、毎回同じ位置関係でドラムセットが組めます。
ライブやレコーディング用に、ギターアンプにマイクを立てる箇所を「バミって」おられる方もいます。
押す・巻く(読み:オス・マク)
これは割とよく耳にする言葉ではないでしょうか。
予定より遅く進行している場合が「押す」、早く進行している場合が「巻く」。
X JAPANとGuns N’ Rosesのライブは確実に押すことであまりにも有名です。
ドンカマ(読み:ドンカマ)
レコーディングの際、リズムキープのために流すクリックです。
オカマの首領ではありません。
現在のコルグが1963年に発売した日本初のリズムマシン「DONCA MATIC(ドンカ マチック)」が由来らしいのですが、当時の価格は現在の価値に換算して300万円(エーヒャクマン)ほどしたそうです。
西中島南方(読み:ニシナカジマミナミガタ)
日本プログレ界の貴公子:難波弘之さんが考案された、8分の11拍子の曲を容易に演奏するための魔法の言葉。
この発明により大阪市淀川区の「西中島南方」駅は、一気にプログレ愛好家達から聖地扱いされるようになった、かは分かりません。
トラ(読み:トラ)
代役のことです。由来は「エキストラ」より。
テレコ作用により「トラエキス」とはならなかったのですね。
用例
「来週のライブ、ベーシストが入院してしまって、トラで弾いてくれへん?」
「ギャラ出んの?」
「打上の呑み代とっぱらいでどう?」
黒歴史(読み:クロレキシ)
これは業界用語ではありませんが。
バンドマンの皆さんには抹消してしまいたい黒歴史の1つや2つ、あるのではないでしょうか。
イギリスのロックバンド:Museは、過去ファンクを演奏していたことを黒歴史扱いしているそうです。
私も高校生の頃、ハードロックギターを弾く一方で、おニャン子クラブのおっかけをしていたなど、死んでも言いたくありません。
もっと興味のある方は。
ご紹介した用語はほんの氷山の一角ですが、もっと知りたい方には、こんなサイトもあります。
知ったところで日常生活で使う機会はあまりないと思いますが、なるほどと思う言葉やクスッとさせられるトリビアが適度にちりばめられており、面白く読めると思います。
ライタープロフィール
ライブスポットラグ
平田 浩康
Live Spot RAGの平田浩康です。
15歳の時、音楽特にロックのカッコ良さに痺れギターとバンドを始めました。
生まれ故郷の高知県は、ライブハウスやコンサート会場も少なく生の音楽に触れる機会が少ない、当時は情報源も雑誌やCD、VHSビデオ(!?)という時代でしたが、音楽というとてもキラキラしたものに魅了され、勉強そっちのけでギターと音楽を楽しむ毎日でした。
大学進学から京都に移住し、大学では軽音楽部を卒業(笑)。
それまでは邦楽ロックや洋楽ハードロックを中心に聴いていましたが、先輩や同期から世の中にはもっとたくさんの音楽があることを知らされ、今では「いいな」と思えるものはジャンル隔てなく聴いております。
大学卒業後にRAGに入社、約6年のオフィスや約10年の音楽スタジオを経て、現在は創業39年の老舗Live Spot RAGにて勤務、主にプロモーション業務を担当しております。
日本トップミュージシャン達が奏でる「本物の音楽」に触れ、お客様に届けることで、あらためて音楽の煌めきを実感する日々です。
今でもギター、バンドはゆるく継続しており近年は今更ながら歌も歌ってみたりしています。
もうすっかりおっさんになってはしまいましたが、あの頃「音楽に描いた夢の向こう側」を、今後もみなさんと追っていければと思っています。